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zoom RSS 立件されなかった「死亡事故」 [横浜地裁 平成21年(わ)第2640号]

<<   作成日時 : 2012/03/21 19:07   >>

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・・・09年9月に横浜市中区で軽自動車を運転中、自転車と衝突して男性(当時17歳)を死亡させたのにも拘らず現場から逃走したとして、道路交通法違反の罪に問われた被告の判決公判が3月21日に横浜地裁で開かれ、久我裁判長は被告に無罪(求刑:懲役1年)を言い渡した。
 判決理由の中で久我裁判長は、争点となっていた被告の責任能力の有無について「事件当時は無自覚低血糖で、分別もうろう状態だった」とする医師の鑑定結果を全面的に採用。その上で、「是非弁識能力を欠いていた疑いがあり、責任能力は認められない」と指摘し、「高度の意識障害は無く、合理的判断は可能だった」とする検察側の主張を退けた。
 判決言い渡し後、久我裁判長は「無罪は無罪ですけれど、被害者遺族へは誠意をもって対応して欲しい」と被告に語り掛けた。

(傍聴席)
 筆者は今年の1月25日に行われた証人尋問で、被告の精神鑑定を行なった医師が「心身喪失で責任能力は無かった」と証言していた、との情報を入手していた為、それ以降の公判とこの日の判決に注目していた。
 その後の公判で、この事件が09年に発生した死亡事故だった事や、それにも拘らず自動車運転過失致死罪での立件は見送られていた事などを知るにつけ、「これは裁判所も難しい判断を迫られそうだな・・・」と思いながら裁判長の第一声に耳を凝らしていたが、久我裁判長は淡々とした口調で「被告は無罪」と一言。

 判決理由を聞いた限りでは、やはり医師の鑑定結果が“決定打”になった模様だ。
・被告は1型糖尿病だった。
・事故当時は無自覚低血糖で、分別もうろう状態だった。
・被告には事故に関する記憶が全く無く、しま状の記憶が残っている部分健忘だった。
・事故後も意味不明な急加速をしており、目撃者がクラクションやパッシングをしても全く反応していない。
・警察に事情聴取された際に「すみません」と言ったのは、受動的反応に過ぎない。
・事故当日に行われた飲酒検知で歩けなくなったのは、不自然・不可解。

 その上で、道交法違反の故意があったかどうかについて言及。「本件当時、フロントガラスが割れていたのは認識しており、報告義務違反の故意が認められるが、未必的故意を有していたかどうかは疑問が残る」「当時の精神状態に照らすと、救護義務違反の故意は認められない」と指摘し、最終的に「責任能力が無かったのだから、故意も認められない」と結論づけたのだった。

 ただ、検察側にとってはあながち「予想外の判決だった」とも言えまい。自動車運転過失致死罪での立件を見送った時点でこういう結果が導き出される事も十分予想出来た筈であり、被害者遺族の手前上、無理を承知で“見切り発車”した感は否めないからだ。

 ともあれ、今回の判決が社会に与える影響は少なくないと思われる。「糖尿病に起因する低血糖が運転に支障を来す可能性がある」と証明された以上、免許取得・更新の条件に新たな一項が加わえられるなど今後の法整備に一石を投ずる可能性をも秘めている、と言えよう。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
実に興味深い事件ですね。
もっともっと深く詳しく知りたいです☆
今年は横浜地裁はどの裁判官が異動でしょうかね〜☆
突っ込みが激しい検事が来ないかどうなのかも気になります☆
横浜地裁はたまにお邪魔するくらいであんまりわかりませんが30代のショートカットの女検察官がもうちょっと強く激しく突っ込んで欲しいって毎回みてておもってます。
口撃型検事派
2012/03/21 21:15
本事件の判決内容については、明日(22日)の新聞各紙でも報じられると思いますので、まずはそちらをご確認下さい。
また、数日前には東京新聞でも本事件についての詳細が記事になっていますので、そちらも併せてお確かめ下さい。
執筆者
2012/03/21 21:56

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